浜松市・ごうのや(剛家)

 

 Iさんとの出会いは、子供も私も通っていた地元のラグビースクールのつながりから。 地元Loveな御主人でしたので、生まれ育ったこの集落で家を建てたいと希望されていました。

 

 ただ、このエリア、なかなか土地の出物がなく、家が建つまで何年かかるだろうとご実家のお母さんも心配しておりました。  「ホントは、ずっと土地が見つからないんじゃないかと思っていた」とのお母さんの後日談もあったほど。

 

人の縁とは分からないものです。 なんと、ひょっこり丁度いい土地が出てきたのです。

 

 以前、私の中学時代の恩師に「先生、あのエリアにお住まいでしたよね? 近所で土地を手放したいって情報あったら教えて下さいね。」とメールしてあったことを私自身忘れた頃に携帯に電話が!  そんなわけで司法書士の同級生の登板もあり、不動産業者なしで土地の売買が成立しました。 まさに縁がなし得た奇跡です。

 

 今回の敷地は宅地を二分割した、北側の狭い側の約50坪の土地(都会では十分に贅沢な面積ですが)。 ここに2階建ての住まいを設計しました。

 

 二分割の南の土地も売りに出ていますので、いつか必ず家が建ちます。 ただ、買主の決まっていない段階では、見えない「隣家」をイメージする他ありません。 さて、どうしましょう。

 

 まず、1Fに100%の日当たりを求めるのは止めて個室を配し、LDKは2Fに設け、視線が確実に抜ける部分に窓を切り取ることを提案しました。 南にこだわらなくても、風景の切り取り方を変えれば、視界の御馳走はあちこちにあります。 設計者に求められるのは、それを活かすセンスと、気づくアンテナだと考えています。 

 

 また、土地がコンパクトなこともあり、予算も限られていますので建物も当然コンパクトに納めることを意識しました。 ただ、個室を壁で区切って建具で閉めて、廊下でつなぐのは、この場合の間取りの解法としては、魅力に欠けます。 空間を壁で仕切ることはせず、高低差で区切り、〇〇コーナーのような緩く分けられた居場所を作りました。

 

 なお、建物の仕様を落として、限られた予算で床面積を稼ぐのは、建主に対して不誠実だという当事務所の方針もあり、仕様を落とさず、使いやすい設計を目指しています。 空間の無駄を減らせば、密度の高い住空間は作れるのです。  セルロースファイバー・高性能樹脂サッシを使用し、もちろん仕上げ材も床・壁・天井とも妥協はしていません。

 

 極力、テイストのバラバラな既製品の家具を持ち込まなくて良いように、工夫をして安価に造作工事で作ることも当事務所の得意技です。 一般的に、家具をまるごと家具屋にオーダー発注するのは、ご想像の通り安くはありません。 当事務所では、ミリ単位で詳細検討した図面を基に、器用な大工、精度の高い仕事の建具屋とのコンビネーションにより、用途、要望を聞きながら比較的安価な造作家具を実現しています。

 

 こうして完成したIさんのお住い。

 お子様はまだ小さく、これからこの家でどんな家族の暮らしが待っているかと思うと設計させていただいた私もワクワクします。

 

土地取得からのいろいろなご縁でIさんのお住まいが完成したこと、ありがたく思います。