こんにちは。浜松の「木の家づくり応援団」、大林勇設計事務所の大林です。
皆さんは、「家の快適さ」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
最新の設備、広々としたリビング、あるいは「耐震等級3」や「断熱性能」といった数値かもしれません。もちろん、一級建築士として安全や経済性を支える高い性能は「標準」として確保します。
でも、私が考える本当の快適さとは、もっと泥臭く、人間の「五感」に直接響いてくるものかな、と自分で設計した家に10年以上住んで確信しています。
足の裏が教えてくれる「本物の暖かさ」
住宅設計の仕事をしていて、私が素材選定で最も熱が入るのは「床」の話です。なぜなら、床は家の中で人間が最も長い時間、直接触れている場所だからです。まず、床の上に立ち、腰を下ろし、手をついてゴロッと横たわるとき、工業製品のペタッとした床とは違う肌触りに、気持ちが緩む気がしています。 まあ、そのまま昼寝をしてしまうこともしばしば。
色合いや素材感で決まることもありますが、円安の今ですから当事務所では、地元・浜松の天竜杉や桧の無垢材を強くお勧めしています。傷が気にならないなら、柔らかめの杉。杉よりも固めな桧もオススメです。量産型のハウスメーカーで多用される合板フローリングは、パッと見は綺麗ですが、夏場はベタつき感もあり、冬場は氷のようにヒヤッと冷たく、硬い感触が残ります。 対して、天竜杉の床を素足で歩いてみてください。杉は空気をたくさん含んでいるため、冬でも驚くほど温かみがあり、肌が床に吸い付くような心地よさがあります。 この「足触り」の良さは、理屈ではなくセンスや本能で感じる快適さの正体です。
視覚を調え、嗅覚を癒やす「自然の呼吸」
次に大切なのは、視覚と嗅覚です。 私は、ビニールクロスを一切使わない、砂漆喰(しっくい)左官の壁を好みます。 職人が鏝(こて)で仕上げた継ぎ目の無い滑らかな壁は、光を柔らかく反射し、空間に独特の陰影と奥行きを与えてくれます。 また、自然素材の家には、特有の「香り」があります。 高野槙(こうやまき)や杉の香りは、今のハウスメーカー主導の家づくりでは忘れ去られてしまったものですが、そこには心を深く落ち着かせる力もあります。モノトーンやコンクリート打ち放しのような「クールで緊張感のある空間」よりも、私は長い間、子どもたちが巣立ってからも「深呼吸したくなる温かみ」を大切にしたいと思います。
手間を愛着に変える「住育」という視点
自然素材には「傷がつきやすい」「手入れが大変」という側面もあります。しかし、私はそれを欠点とは捉えていません。例えば、障子を子供が破ってしまうこともありますが、家族で紙を張り替えるその「手間」さえも、家に愛着を持ち、住みこなしていくための大切なプロセス(住育)だと考えています。壊れやすいものであれば、壊れないように使うのも大事な教育だと、この前自分で本物の和紙に張り替えながら思いました。
自分で植物油を塗り込み、傷さえも家族の歴史として刻まれていく。完成時が「美しさのピーク」で、あとは劣化していくだけの工業製品の家ではなく、年月を経て「美しく古びる」家こそが、真に快適な住まいではないでしょうか。
「何だかいいね!」から始まる家づくり
家を建てることは、単に「ハコ」を買うことではなく、自分や家族がどう生きたいかを意識するプロセスそのもの。住宅展示場の営業マンのペースに流されるのではなく、まずはご自身の五感を信じてみて。数値化できない「居心地の密度」を、共に対話しながら形にしていければ、いい家ができると思います。理屈ばかりではなく、「何だかいいね!」くらいの感覚のほうがきっといい。人生だって、思った通り、描いたとおりに行かないではないですか。 もし、画一的な家づくりに違和感を抱いているのであれば、ぜひ当事務所を「駆け込み寺」だと思って訪ねてみてください。本物の木と漆喰が織りなす、理屈抜きの快適さを一緒に仕立てていきましょう。
大林勇設計事務所は、浜松市浜名区にある「木の家に暮らす愉しみ」をデザインする建築設計事務所です。土地探しのご相談から薪ストーブの導入、古民家リノベーションまで、お気軽にお問い合わせください。
