· 

数値を超えた心地よさ、木の家という選択

こんにちは。浜松市浜名区の「木の家づくり応援団」、大林勇設計事務所です。

早いもので、大学院を修了し、建築の世界に身を置いて29年目の夏を迎えようとしています。自分でも数えてみて驚きの年数です。

 

最近はSNSで手軽に情報を集められる分、「情報の波」に飲まれて疲弊している方を多く見かけます。住宅展示場の営業攻勢や、契約してからも既製品の組み合わせでポンポンと決まっていく間取り、そもそもモデルハウスと自分が建てられるの我が家の大きさがそんなに違うなんて、というギャップ。そんな家づくりに違和感を抱き、私の事務所へ「駆け込み寺」のように相談に来られる方がいらっしゃいます。さらには近年の物価高騰、金利上昇。もはや諦めに似た、疲労感を家づくりのスタート前から醸し出している方も・・・。

 

なぜ、私の自宅に足を運んでいただくと、「落ち着く」と言っていただけるのか。今回は、私が設計の核としている「木の家に暮らす愉しみ」について、理系的な視点と建築実務者(建築家と自分で言うのは違和感を感じる派)としてのこだわりを交えて書いてみようと思います。

「坪数」を減らし、「密度」を上げるという選択

私が打ち合わせでよく提案するのは、「建物の面積を1坪減らしてでも、素材や外構の質を上げましょう」という、量産ハウスメーカーとは逆行する考え方です。家庭の考えと将来展望により、住宅建築に費やすことのできる金額は限られている。

 

特に、一次取得者の場合、お子さんもこれから、もしくはとても小さく、将来の教育費用も未知数。 イケイケペースの住宅計画では、負担が重くなることは見えています。 そこで、「ギュッとコンパクトに」です。

 

その確信の原点は、2006年の建築巡りの際に20キロのバックパックを背負い、雨の山道を50分登って辿り着いたスイスの「聖ベネディクト教会」にあります。 巨匠ピーター・ズントーが設計したその空間は、驚くほどこじんまりとしていました。しかし、そこには極限まで研ぎ澄まされた素材の質感と、圧倒的な「居心地の密度」がありました。

 

住宅も同じです。数字上の「広さ」や「ステイタス」を追うより、地元・浜松が誇る天竜杉や天竜桧の床を素足で歩く感触や、漆喰壁が光を吸い込む表情に予算を投じる。それこそが、毎日を「リラックスできる場所」にするための正解だと私は信じています。

障子は、感性とロジックを繋ぐ「高性能フィルター」

当事務所の設計に欠かせないのが「障子」です。リビングに障子を入れると言うと驚かれることもありますが、これは単なる和風趣味ではありません。

まず、理系的なメリットとして、障子は窓際に空気層を作る「簡易的な断熱層」として機能し、冬場のコールドドラフトを劇的に抑えてくれるのです。 そして感性の面では、和紙を通した柔らかな拡散光が、杉の床や漆喰の壁に反射し、デジタルな日常を忘れさせる静謐な時間を作り出します。提灯を見ると、気持ちが穏やかに和むのと同様だと私は考えます。

 

性能という「ロジック」と、光という「感性」。障子はこの両方を満たしてくれる、住まいの優れたインターフェースなのです。

「3A」のリスクを越えて、愛着を育む

私は一級建築士として、「耐震等級3」や「省エネ等級5以上」といった高度な性能は、今の時代に備えるべき「安心の最低ライン」だと考えています。しかし、それだけで「いい家」にはなりません。 車やバイクのように、何馬力とか最高速度が何キロという話とは、区別して考えたいと思っています。

 

例えば天窓(トップライト)。私はこれを「3A(暑い、雨漏り、洗えない)」のリスクがあると呼びます。それでも、そこから落ちる垂直の光がもたらす空間の劇的な変化は、何物にも代えがたい。 もちろん対話の上でリスクを理解した上で「面白さ」を選ぶ。そんな「一品生産」の家づくりにこそ、住まう人の個性が宿ります。

 

また、お施主さん自ら塗装に参加するような**「住育(じゅういく)」**も大切にしています。自分の手をかけた家には、傷一つさえ「家族の歴史」として愛着が湧く。美しく古びていく素材を、年月をかけて住みこなしていく愉しみ。それこそが家づくりの醍醐味です。

我が家だけの「答え」を求めてみる

家を建てることは、単に「ハコ」を買うことではありません。自分や家族がどう生きたいかを意識し、再定義するプロセスです。と、書くと難しそうに見えますが、自分はどんな生き方をしたいかぼんやりとイメージするだけで構いません。

 

もしあなたが、量産メーカーの営業ノルマや画一的なプランに疲れ、自分たちらしい「暮らしの答え」を見失いそうなら、ぜひ一度、当事務所を訪ねてみてください。

 

心地よい寸法や質感、アナログな温かみを大切にしながら、依頼人が永く愛着を持って住みこなせる「最高の仕立て」を、共に見つけていければ、嬉しいなと思います。