NHK『べらぼう』を思い出し、浮世絵を見に行く

 恵那市にある中山道広重美術館へ、浮世絵を鑑賞しに出かけてきました。 

 

設計の仕事をしていると、どうしても建物や空間に目が向きがちですが、たまにはこうして「絵」の世界に浸るのも、五感を整える良い刺激になります。 特に浮世絵は版画なので、何工程も手間のかかる、「面倒くささ」が私の心の琴線をくすぐるのです。 設計の合間の「寄り道」と新発見も大切な仕事のひとつ。

 

 美術館と聞くと、「歴史を知らないと楽しめないのでは?」と、どこか身構えてしまう方も多いかもしれません。しかし、若い頃から私が国内外の旅行に行くたびに美術館を訪れた際にも感じたのは、アートはもっと「軽やかに」楽しんで良いのでは?ということ。

 

  歌川広重が描いた浮世絵は、当時の人々の旅の様子や日常のひとコマを切り取った、いわば当時の「暮らしのデザイン」そのものです。  それは、私が理想とする、気取らずにリラックスできる木の家での生活にも通じるものがあります。

 

  教科書的な知識は脇に置いて、まずは自分の目で見て、「この色使いがいいな」「この旅人は楽しそうだな」と、直感的に感じることが大切だと思うのです。

 

私が家づくりで大切にしているのは、天竜杉の柔らかな手触りや漆喰の温かみといった、理屈抜きの「心地よさ」。 私は自分で設計した自宅に住みながら夏には夏の良さ、冬には冬の良さをいつも感じています。

 

 美術鑑賞もそれと同じで、「本物が放つオーラ」を肌で感じることに意味があります。 デジタルデバイスの画面越しでは決して得られない、紙の質感や色の重なりから伝わる熱量は、私たちの感性を豊かに耕してくれます。

 

もし、旅の途中で素敵な美術館を見かけたら、ぜひ「駆け込み寺」を訪ねるような気楽な気持ちで、一歩足を踏み入れてみてください。  難しい数式を解くような鑑賞ではなく、図書館で好きな雑誌をパラパラとめくるような、ゆったりとした時間。

 

 そんな「かしこまらない」体験こそが、日常の暮らしにちょっとした彩りと「愉しみ」を運んできてくれるはずです。

 

浜松市で、五感で愉しむ「木の家」と「暮らし」をデザインしています。  

大林勇設計事務所