静岡県・地域文化財専門家育成研修

登録有形文化財
写真は、一例です。

 私が所属する、所属する静岡県建築士会の景観整備機構のお誘いもあり、6月より7回にわたって開催された表題の「地域文化財専門家育成研修」を受講していました。静岡県の地域文化財専門家は、日本建築士会連合会ではヘリテージマネージャー(地域歴史文化遺産保全活用推進員)と位置付けられており、地域に眠る歴史文化遺産を発見し、保存し、活用して、地域づくりに活かす能力を持った人材のこと。ちょっと大げさでくすぐったい気持ちもしますけどね。

 

 建築士会では、歴史的建造物の保全活用に係る専門家であるヘリテージマネージャーを育成し、多様な人たちと連携しながら地域文化活性化の一翼を担う人材群として活躍してもらうことで、誇りのもてる地域づくりに貢献していくことを目指し、全国ヘリテージマネージャーネットワーク協議会という、大掛かりな組織が構成されています。

 

 歴史的建造物は、日本の文化や時代の記憶が刻まれており、その土地らしさを形づくる重要な文化資源であり、時代の証人です。しかし、古い建物の価値を知る人がいなければ、これらは守られずに一瞬のうちに失われます。1995年の阪神淡路大震災の際には、多くの歴史的建造物が倒壊し、存在すら広く把握されいなかったために再生されずに人知れず失われました。これをきっかけに誕生したのが「登録有形文化財」制度と「ヘリテージマネージャー」です。

 

 登録有形文化財建造物とは, 50年を経過した歴史的建造物のうち, 一定の評価を得たものを文化財として登録し, 届出制という緩やかな規制を通じて保存が図られ, 活用を促していくもので、1996年(平成8年)の文化財保護法改正により創設されました。 修理の設計監理費の半額補助や家屋(土地ではない)の固定資産税、都市計画税の1/2減免、家屋等の相続税、贈与税の一部控除など、助成制度も整備されています。 

 

 公共建築物でもない限り、建物は個人の所有物ですし、維持保全には当然費用もかかりますので、費用も負担しない外部の人間が「残せ、残せ」「取り壊し反対」と外圧をかけるのは、個人的には違和感がありますが、「先祖代々の良い建物なのだけど、維持保全や将来の相続まで考えると何から手を付けてよいか分からない」といったお悩みを抱える所有者の方は、静岡県建築士会にご相談いただければと思います。