塀の向こうの世界を見る、なんて言うと意味深で、なにか悪いことをやらかしたのかと心配されそうですが、私が長年憧れて見てみたかった塀の向こうは、京都にある和洋折衷町家建築「八竹庵(旧:川崎家住宅)」でした。

京都は何度も訪れているものの、以前からマークしていたこの町家建築の塀の向こうにどんな世界が広がっているのか、見たい見たいと思ってはいたものの、タイミング悪く、いつも逃していました。 しかし、今年は静岡県建築士会主催の地域文化財専門家研修を受講していることもあり、後学のために訪問することに決定。 チャンスを逃すわけには行きません。
入館料1700円は安くはありませんが、建築に興味のない訪問者が手荒にあちこちを触って破損する可能性を考えると、むしろ訪問者を選び、建物を守るフィルターになっていると感じました。 そのせいか、貸切状態で腰を据え、庭を眺め、じっくりと見学することができました。 建物の維持には莫大な費用がかかります。 質を保つために、タダはいけません。
設計は関西近代建築の父、「武田五一」。京都大学百周年時計台記念館など、関西に多く作品を残す建築家です。 木の家の設計を生業とする私には、宝物のような教材です。

恐る恐る中へ。まだ、門をくぐったばかりだと言うのに名建築にお邪魔できる、ワクワクが止まりません。この先に、客用、家族用、使用人用の3つの玄関があるとのこと、説明を聞いて驚き。

思わず、振り返って1枚。 和と洋の不思議な組み合わせ。とても個人の住宅とは思えない、上品なアプローチ。お子さんや家族がここを通って帰宅する様子を想像。

客用玄関から中に入ったスペースにある、洋間。塀の外から想像もできなかった世界が広がっています。
