使いたい自然素材(杉・桧・左官・漆喰・石)


素材選定基準

材料を選定する上で、当事務所なりの考えに基づいて材料選択をしています。

 

①量産ハウスメーカーで当然のように使われるニセモノ建材は使用しない。

 

②経年変化に耐えうる素材を探す。

 

③上品な調和を生み出す素材を選ぶ。

 

④触れて心地よいものを体験してもらう。

 

⑤全体的なコストバランスを考え、取捨選択を行う。


・無垢の木(天竜杉、天竜桧)

 湿潤の気候に慣れ親しんだ多くの日本人は、木の家に安らぎを感じる。ただ木造住宅とは言っても、骨組みを石膏ボードで隠す大壁工法がハウスメーカーを中心に主流となっているため、柱・梁の姿を見る機会は一般的に減少しつつある。

 

 また一般的住宅ではコストの事情から耐久性に乏しい樹種の輸入集成材を用いる事も増えたため、表に出して使うには心苦しい事もあり大壁工法の方が住宅供給者に都合が良いという皮肉な状況でもある。

 

 当事務所では主に天竜杉・桧を柱として採用しており、家全体の雰囲気にあわせて節の程度、木目の具合を勘案し、適度に見せるように心掛けている。もちろんコストに直結する部分であるため、無等級の状態の柱の山から良さそうなものを選別して使い分けてくれるような材木業者・大工の気配りに支えていただいていることも書き加えておく。また、構造材以外にも床・壁・天井にも無垢の木を多く採用し、用途に合わせた部屋の雰囲気作りを心掛けている。

・左官(土、石灰、漆喰をはじめとする自然素材)

   大げさに言えば現在、職種絶滅の危機にあると言えるのが、左官職だ。


 石膏ボードにビニールクロスが主流化してしまったため、室内で左官職の仕事を見つけることが難しくなって来ている。水を使わない工事は工期短縮でき、職人による技能の差が現れにくいためである。一般の方はまるで乾式工法が最先端で主流化したかの印象を受ける事だろう。

 ただ、誤解してはいけない。主流化=正解とは決して言えない。住宅会社に都合の良いだけの話。


技術の優れた左官職に巡り会う事ができれば、これほど木と相性が良く表現性にあふれた素晴らしい素材は他には無いからだ。 10年20年経っても、陰影のある魅力的な表情を見せる。
 シックハウスやアトピーが社会問題化する中、調湿効果のある左官が見直されつつある。このすばらしい技術を絶やさないためにも、大林勇設計事務所では左官を強く勧め、採用している。

 

・金属(鉄、アルミ、ステンレス、真鍮、銅)

 木に比べて少ない断面で強度を発揮する事ができるのが金属の魅力で、当事務所ではあまり存在感を出したくない骨の役割で登場する事が多い。外部に使用する際には亜鉛メッキを施し耐久性を向上させている。

 木と左官以外にも所々に登場する金属は、室内では引き締めのスパイスとなっている。また真鍮は時を経るごとに酸化し、5円玉のように色に落ち着きが増してくる。このような経年変化も「古びる」味わいの一つだ。