浜松市・かなでや(奏家)

 Sさんとの出会いは、土地探しの段階からお問い合わせをいただいたことが始まり。

その時はまだ土地取得の検討中で、実家に近いエリア限定で土地を探しておりました。

 

 いよいよ土地を購入か!と思った段階で、売り手が売却を取り下げたり、横やりが入ったり、で家づくりよりも土地探しで苦労した思い出があります。 お会いしてから2年くらい経った頃でしょうか、突如現れた変形の売り土地が魅力的で、ここにお住まいを構えることになりました。

 

 過去の経験から、整形土地よりは、変形の方が土地の使い道に広がりがあり、角地のメリットを生かして面白みのある計画が生まれやすい気がします。 真四角の土地にあえて斜めに建物を建てる奇策ではなく、変形に一部だけでも寄り添ってみる、という試みが今回のお住まいの魅力となりました。

 

 ご夫婦ともシンプルな暮らしを楽しまれている子育て世代で、当事務所がおすすめしたい空間や、自然素材と光が生み出す素材感を気に入ってくださり、家づくりはとてもスムースに進みました。

 

 大工さん、職人さんの技術も評価してくださり、私も含めて一同ついつい頑張ってしまいました(笑)。 「マイホームをすでに取得した会社の同僚と家づくりの話題が、全く合わないんです、いろいろ違いすぎて。」とのことでした。 そうですね、車を購入するような感覚の家づくりがほとんどの中、建築士と一緒に杉板に塗装する家づくりをする家庭は、10000人に1人も居ないかもしれません。

 

 今回のお住まいで最も重要だったことは、奥様が学生時代の苦楽を共にしたピアノを招き入れること。いくら小型とは言え、グランドピアノですから、大きさや重量、搬入経路など配慮する必要がありました。 あとで、ご主人から聞いた話では「ピアノが家に入らないなら、マイホームなんて別にいらない」と奥様はおっしゃっていたそう。お住まいの完成後にピアノを招き入れてから嬉しそうにピアノを弾く奥様とお子様を見ていたら、感動のあまり私までもらい泣きしそうでした。

 

 また、外構計画は縁あって、小中学校の同級生、川村氏(蒼蒼舎)が手掛けました。当事務所の作風を理解してくれている川村氏の登場で、自然な作風の外構が実現することで住まいも魅力が増し、私にとっても嬉しい協働となりました。

 

 ご家族の強い思いに私が刺激を受けた、実に思い出深い家づくりとなりました。